厳選素材と手づくりが生む
唯一無二のお菓子
代表取締役 小関純子さん
「スポンジの質感を安定させるまでには、
生地が固く、でこぼこになってしまったりと、多くの苦労もありました」
と語る代表取締役の小関純子さん。
春の淡雪のように軽やかなお菓子
冬の雪深さで知られ、「日本三雪の地」にも数えられる尾花沢市。この地に工房を構える和洋菓子店・有限会社ぱんどらで、雪の里にふさわしいお菓子がつくられています。それは、代表取締役を務める小関純子さんが約20年前に考案したロングセラー商品“最上川あわゆき”。
白味のスポンジの口どけのよさが特徴で、軽やか、かつ、やわらかな食感は、まさに川面にはかなく消えゆく春の淡雪を思わせます。スポンジにサンドされるのは、北海道産の小豆を用いた餡と生クリーム。あっさりした上品な甘さの餡と生クリームの濃厚さが相まって、絶妙なバランスを生み出しています。
「使っている原料や配合も、20年間ほとんど変わってないんですよ」と小関さん。芸能人ご用達のお取り寄せスイーツとしてテレビ番組で紹介され、全国区のお菓子となった現在も、伝統の味を守り続けています。
真っ白なスポンジややわらかな食感、口どけのよさ、すべてが「淡雪」のネーミングにぴったり。
徹底している“手作りへのこだわり”
独特の食感が特徴的な“最上川あわゆき”のスポンジ。実は、一般的なスポンジがつくられる際の材料の配合やプロセスとは大きく違っているのだそう。「私はもともと菓子職人を目指していたわけではなく、店には熟練の職人もいなかった。今思えば、怖いもの知らずの素人の発想ゆえに生み出せたお菓子なのかもしれません」と小関さん。
卵白をしっかりと泡立ててきめ細かなメレンゲをつくり、低温で焼き上げていくスポンジには、気温や材料の温度、水分の調整など、すべてに細かな配慮や厳密さが要求されます。長年の経験により培われたつくり手の“勘”がものをいうだけに、全工程が手作業によって行われています。
「自分たちの都合でつくっては、決しておいしいお菓子はできません。むしろ、つくり手の方がお菓子の都合に合わせなければ」という小関さんの言葉からも、手づくりへの徹底したこだわりが感じられます。
北海道産の小豆を用いた皮むき餡を使用。えぐみやくせがなく、上品な甘さのあんこに仕上がります。
スポンジの上に、あんこ、生クリームを順に重ね、厚さが均一になるように手早く伸ばしていきます。
受け継がれる、唯一無二のお菓子づくり
小関さんが大切にしている、“最上川あわゆき”のコンセプト―。それは「和洋折衷のおいしさ」。現在は、定番の“あんこ”に、新たな和素材として“ずんだ”と“和栗”が加わり、3つの味が人気を競っています。
「スポンジとの相性のよさはもちろん、郷土や自然の恵みを感じられるような素材を選んでいます」と小関さん。いずれも素材本来の味わいと質感がストレートに活かされ、風味豊かな逸品に仕上がっています。
ぱんどらでは、これまで小関さんを含めた女性スタッフのみで製造・販売を行っていましたが、約3年前から小関さんの息子さんが“黒一点”として工房に加入。小関さんは「若い人の発想を取り入れて、よそにはない新しいお菓子をつくっていきたいですね」と目を細めます。これからもぱんどらの工房で、オリジナリティ溢れるお菓子がつくり継がれていくことでしょう。
茶豆を粗めにすり潰し、生クリームであえた“ずんだ”と、愛媛産の栗と和三盆糖を使用した“和栗”も登場し、味のバリエーションが楽しめます。
多様な和洋菓子が豊富に揃う店内。遠方からも多くのお客様が訪れます。
<2011年12月17日取材>