vol2.マルタ醸造(寒河江市)

「現代の名工」が手がける、
珠玉の味噌・醤油

マルタ醸造 代表 工藤祐三郎さん

代表 工藤祐三郎さん 気さくに語りかけてくれる、「現代の名工」にも選ばれた工藤代表。

山形県を代表する味噌・醤油作りの名人

マルタ醸造代表の工藤祐三郎さんは、昭和30年代から味噌・醤油作りに励んできた、山形県を代表する職人です。平成16年には、伝統工芸や工業技術などの分野で優れた技術、業績を持つ人に贈られる卓越技能者厚生労働大臣表彰「現代の名工」(味噌製造)を受けました。
出羽三山の宿場町として栄えた寒河江市の白岩地区で、江戸時代・文久3年より醤油、酢の製造と呉服店を営んでいた工藤さん宅。家業の醤油製造業を継ぐことに決めた工藤さんは、東京農学大短大で醸造技術を学び、卒業後は千葉の醸造会社に勤務。その後実家に戻り、昭和34年にマルタ醸造を新創業、平成元年からは味噌製造設備を一新しました。

国産大豆を清廉な月山水につけて、よくふくれたら蒸し上げます。

国産大豆を清廉な月山水につけて、よくふくれたら蒸し上げます。

手間暇かけた「月山山吹みそ」は全国で高評価

マルタ醸造で製造している「月山山吹みそ」は、工藤さんをはじめとする職人が丹精をこめて醸造した米麹味噌です。厳選された国産の原料を、確かな技術で醗酵熟成させた味噌は、山吹の様に鮮やかな色と風味豊かなコクのある味が魅力。特に、鉄分を含む大豆の皮を取り除くことで色合いや食感を高めた「月山山吹みそ 吟醸」(限定品)は、全国味噌鑑評会にて平成元年より連続入賞、特に平成7年と14年には最高賞を受賞しました。
大量生産品では味わえない昔ながらの味が、「懐かしい田舎味噌の味」として多くの方に支持されています。

麹作りは重要な工程。温度と湿気の管理に細心の注意を払います。

麹作りは重要な工程。温度と湿気の管理に細心の注意を払います。

県内でも数少ない「本醸造醤油」の作り手

現在、製造工程に手間がかかる本醸造醤油を自社製造している会社はほとんどなくなり、山形県内でも4~5軒を数えるのみです。マルタ醸造の「手づくりしょうゆ」は、昔と変わらず100%自社製造です。厳選した原料を使用し、もろ味を江戸時代から続く木樽で1年以上醗酵熟成させています。大手メーカーの大量生産品は発酵期間が2ヶ月位ですから、味も深みもまったく違います。
昔と変わらない本物の醤油の味は、手間暇を惜しまずじっくりと時間をかけた証なのです。

大量生産品の流れ作業と違い、すべての工程に職人の厳しいチェックが入ります。

大量生産品の流れ作業と違い、すべての工程に職人の厳しいチェックが入ります。

変わらない手作りの味を提供

当然、手作りならではの苦労も多々あります。早いときは午前4時半から起きて麹の状態をチェックすることも。味噌作りは、手間暇をかけても出来上がってみるまで分かりません。それだけに、良いものが出来上がったときの喜びはひとしおとのこと。
「味噌は発酵からくる本来のうまみがおいしいのです。よくある「ダシ入り味噌」というのは、流れ作業の大量生産であるために、熟成不足(味不足)を補うようにダシを加えているだけです。本物の深みやまろやかさは手作りでないと出せません」と語る工藤さん。現在は山形県醤油味噌工業協同組合の理事や技術アドバイザーも兼任しており、県内の醤油・味噌製造業の活性化や、次世代の職人の育成などにも力を入れています。

大量生産品の流れ作業と違い、すべての工程に職人の厳しいチェックが入ります。

大量生産品の流れ作業と違い、すべての工程に職人の厳しいチェックが入ります。

<2009年4月9日取材>

マルタ醸造

宿場町として栄えた寒河江市白岩地区に建つ工場。 宿場町として栄えた寒河江市白岩地区に建つ工場。