「きらり」と輝く、
真っ赤な果物の宝石。
生産者 秋場尚弘さん
「初夏、ようやく赤く実ったさくらんぼを食べる瞬間が一番うれしい」
と秋場尚弘さん。
樹の声を聞くことから生まれる、実りと味わい。
全国の生産量第1位を誇る、山形県のさくらんぼ。昼と夜の寒暖の差が激しい山形盆地ならではの気候が、味わい深い上質の実を育てています。
「甘みと酸味のバランスがよく、ぷりっとジューシーな果肉。目指すさくらんぼを収穫するために、日々樹木に寄り添いながら手助けをしています」。さがえ西村山さくらんぼ部会・部会長の秋場尚弘さんの畑では、スプリンクラーが涼しげに水を撒いていました。
「水はさくらんぼの命。花が咲いてからの水の管理は、玉の成長と味を大きく左右します。なくてはならないし、あげすぎてもだめ。天気と樹の状態を相談しながらです」。
収穫前の畑では、樹木の健康状態を確かめます。葉は青々とした小舟のような形で、軸は張りがあり太め。
「そもそもおいしいさくらんぼを育てるのはこの“葉”なんです。たくさん日光を浴びて光合成をし、実に栄養を送ってくれる。だから木からの枝伸びや、実を付けた周りの葉の様子を見て確かめるんです。さくらんぼの軸が太ければ太いほど栄養が行きわたっている証拠。母と子を繋ぐへその緒ですから。お店でどれを買おうか迷ったら、軸が太く、玉の張りが大きいものがお勧めです」。
生産者のこだわりや土地柄、想いが、それぞれのちいさな一粒に凝縮されています。
真っ赤な色は“さくらんぼ”を育てた人々の情熱。
世界には1000を超える品種があるとされるさくらんぼ。中でも一番人気は、やっぱり『佐藤錦』。先人たちが長く苦労し、情熱を注いだ品種改良の歴史の結晶です。今なお、山形県ではよりおいしいさくらんぼを提供したいと、日々品種改良が進められています。
「実は佐藤錦だけではあの風味を出せないんですよ。早生品種『紅さやか』の花粉と受粉することでぐっとおいしくなるのです。『紅秀峰』も人気で、樹はとっても繊細ですが、実は丈夫で佐藤錦より輸送時に傷みにくい。海外のファンへ向けた輸出も期待されています」。
県内各地域では、毎年さくらんぼの品評会が行われているとのこと。色、艶、大きさ、箱詰めの仕方…、生産者一人ひとりが更なる品質向上を目指し、競い合いながら努力を続けています。「私たちが育てたさくらんぼをおいしいと感じてもらえたら嬉しい。そしてもっとさくらんぼを食べに、山形に足を運んでほしいですね」。
寒河江川の澄んだ水が、スプリンクラーでさくらんぼの元へ。
さくらんぼが傷まないよう、一粒一粒丁寧に、手作業でパックに納められます。
“佐藤錦”と“紅さやか”が植えられている秋場さんのさくらんぼ畑。