子姫芋

郷土料理いも煮の主役
山形で愛される柔らかねっとりの里芋

今井正道さん(寒河江市)
お隣は妻の八重子さん。共に子姫芋の栽培をしています。

寒河江の風土が育んだ伝統野菜

山形県の中央に位置し、日本三大急流の一つである最上川に面する寒河江市。南部地区は過去に繰り返された最上川の氾濫によって砂と土が混ざった「砂壌土」が形成され、芋の栽培に適した肥沃な土壌が育まれてきました。子姫芋は里芋の一種で、江戸時代から受け継がれている伝統野菜。山形の名物「いも煮」の主役として、昔から地元の人に愛されています。
今井さんは子姫芋の味と伝統を守り続ける「さがえ市子姫芋組合」の一人で、祖父の代から子姫芋の栽培を続けています。

おいしさの秘訣は土づくりと手間をかけること

子姫芋は、粘り気と皮をむいた後の白さが特長で、栽培には一年を通して多くの手間がかかるといいます。
「種芋を4月に穴蔵から取り出し、芽出し作業を行った後、5月に本畑に植え付けます。10月前後の収穫までに、2回ほど土を株元にかぶせ、必要があれば肥料を加えます。土をかぶせるのは、光に当たって芋が青くならないよう。白くて艶のある子姫芋のためには欠かせない作業です」
取材に訪れたのは収穫の最盛期。芋を掘り起こし、親芋、子芋、孫芋に分ける選別作業の真っただ中でした。
「市場にでるのは最も柔らかい孫芋。子芋や親芋が混ざらないよう丁寧に選別します」
土づくりと収穫までの手入れ、選別など手間をかけることで、おいしい高品質な子姫芋が生まれます。

トラクターで一斉に芋を掘り起こしてから選別作業をします。

粘りが強くて大変ですが、選別が終わったらきれいに水洗いをして皮むきをします。

子姫芋のおいしさを届けるために

「子姫芋のおすすめ料理はなんといってもいも煮ですね」と今井さん。煮崩れしないながらも、舌でつぶせるほどの柔らかさになり、「ふわとろ」な食感が楽しめるそうです。
なかなか手に入りにくい子姫芋ですが、最近は通信販売でも購入できるようになりました。特に洗い芋の真空パックは若い世代を中心に人気です。しかし、後継者不足の課題があり、子姫芋の良さを広めることで生産者を増やしていきたいと今井さんは考えています。寒河江市でも子姫芋の特長を生かした料理コンテストを開催するなど、子姫芋を継承していけるよう、さまざまな努力をしています。
最上川の恵みと長年の経験で培われた目と技術によって育てられた子姫芋。そのおいしさをぜひ知って、味わってみてください。