すもも

果物の宝庫・中山町で作られる
季節を味わうすもも

鈴木徹雄さん (中山町)

家庭のおやつから町を代表する特産品へ

山形県は東北一のすもも産地であり、中山町は、すももの栽培が盛んな町として知られています。中山町の西部に位置する豊田地区は、丘陵地に位置し気候や土壌に恵まれた、果樹の生育に適した地域です。適地で育ったすももは、品質向上や収量の安定化を図ることによって、中山町を代表する特産品として定着しました。

中山町ではかつて、すももは家庭の庭先に植えられ、子どものおやつとして自家消費されていました。その後昭和30~40年にかけて、商品として市場に並ぶようになったと鈴木さんは言います。昭和45年頃には、豊田地区のすもも生産者を中心に『すもも栽培同志会』が設立され、すもも栽培先進地の山梨県に出向き栽培技術を習得、農閑期にパック詰めの方法を考案し、すもも栽培と商業化が発展しました。

鈴木さんの農園では現在、約60,000㎡の園地で、主にすももの栽培を行っています。

9月中旬、最盛期を迎えたすもも。ブルームと呼ばれる白い粉は新鮮でおいしい証です。(左)
収穫されたすももは一つ一つ手作業で選果され、消費者のもとへ出荷されます。(右)

さらなる甘みを目指した新品種、『秋姫』

従来のすももは「ビューティー」「大石早生」「ソルダム」などを中心に、加工用としての活用が主でした。それは、生食用としては「日持ちが悪い、小さい、酸味が強い」とされていたためです。しかし、ここ20年ほどで新たに登場した品種『秋姫』は、1か月ほど冷蔵保存することができ、大玉で糖度は高く、15度を超えるそう。生食用にぴったりの高級品種です。

かつてのすももは果物の中で脇役的なイメージでしたが、秋姫の登場により、その大きさや甘みなどから、今ではメジャーな果物になりつつあります。「甘みがある分、鳥や虫の食害に遭いやすく、収穫期の9月は台風の被害にも遭いやすいなど、よりおいしいものを作るには苦労も多い」と鈴木さんは話します。

食べごろのすももを見分けるポイントは果皮の色。地色が緑から黄色に変化したすももが食べごろです。(左)
丹精込めて育てたすももを愛でる鈴木さん。今年は高温と少雨の影響で生育が難しかったそうですが、すももの木には収穫の真っ盛りを迎えたすももがたわわに実っていました。(右)

秋の味覚・『秋姫』で広がるすももの楽しみ方

現在、秋姫は約80%が山形県内で生産されています。中山町では生食用のすももはもちろん、すももを使用したワインやジャムなども特産品の一つです。

これまですももは7月から8月にかけて、夏に旬を迎える果物でしたが、秋姫はその名の通り、秋に全盛期を迎えます。すももは旬が短く、季節そのものを満喫するという意味で「すももは旬を味わう果物」と鈴木さんは言います。30種以上もあるという品種による味わいの違いを食べ比べるのも、すももの楽しみ方のひとつ。みなさんも『秋姫』を堪能し、新たな秋の味覚を楽しんでみてください。

従来の品種に比べて、甘みがあり大きいことが特長の秋姫。すっきりとした甘みで食べ応えがあります。